闇金ウシジマくんは漫画であり、フィクションです。
しかし、フィクションと侮ることなかれ。
この作品には学ぶべきリアルがあります。
目次
◆作品中の演出とリアル
【演出1】闇金は事務所を構えない
ウシジマくんは、カウカウファイナンスという業者です。
住所を公開し、債務者を事務所に連れてきます。
面会して融資するスタイルです。
しかし現実には、事務所を公開していれば
足がつき、顔が割れれば捕まりやすくなります。
現在スタイルの闇金で事務所を持っているところは
ほぼありません。
【演出2】直接取立に行く
現在の闇金は、直接取立に行く事はありません。
顔が割れる事を防ぐ為です。
しかし、闇金に雇われた別人が
直接嫌がらせをしてくる可能性はあります。
不良だったり、借金の負担軽減を条件に
他の債務者を利用したりすることもあります。
【演出3】暴力を振るう
警察沙汰になっては、闇金として商売あがったりです。
極力事件にならないように工夫をしています。
なので、暴力を振るう事はおろか直接会う事がありません。
殴られたり刺されたりするような事はないのです。
ただし、電話越しによる恫喝・暴言等は日常茶飯事。
家や職場に出前を大量に送られたり、深夜に電話を鳴らされたりと
「嫌がらせ攻撃」は激しいです。
【演出4】怖いバックがついている
ついているところもありますが、殆どはついていません。
漫画の中でも語られていますが、上納金や付き合いなどの
デメリットが多いためです。
現代において、ここは極めて漫画的です。
◆作品中のリアル
【リアル1】借金をする人の傾向
これは断トツでリアルです。
借金をする人の傾向と人物像は
モデルがいるとしか思えない程です。
私は夜の仕事をやっていた事がありますが
この手の登場人物を数多く見てきました。
パチンコを始めとするギャンブル好き、風俗、水商売の人には
借金癖を持っている人が多くいます。
また、主婦にも旦那に内緒で借金する人が多く、
主婦・女性歓迎とターゲットを絞っている闇金も多く存在します。
【リアル2】弁護士に弱い
作中にそんなに多くは出てきませんが、やはり闇金は弁護士に弱いです。
逆に、警察には対策を練っています。
闇金被害に困った場合、弁護士に相談するのが最善です。
【リアル3】詐欺話がリアル
闇金ウシジマくんの中での闇金は、ここ最近の闇金とは違う。
その代わりに出てくる詐欺話はリアルなものが多く、
情報商材や株投資話なんかは筆者も身に覚えがある。
株投資詐欺なんてHYIPそのものの描写だった。
◆印象に残る登場人物
【丑島薫】
仕事とプライベートはキッチリ分けているが、信念は絶対に曲げない。
闇金業を生業として営んでいるため、客がどうなろうとも搾り取る。
ダメ人間に対して人情の欠片も見せず、仲間が問題を起こすと容赦なくシメる。
反面、男気を見せた人間や信用できる人間には意外と優しい人情派。
ぶっきらぼうだが、仲間への信頼感と面倒見はとても良い。
生活保護くんの佐古が自立の道を歩みだした時、
駅を探して歩こうとするやり取りがお気に入り。
「駅を探しています。遠いですか?」
「遠いよ。この道をまっすぐに歩けば着く。じゃあな」
甘やかさず、自分の脚で、自分の決めた道を歩かせる
男気のある優しさの持ち主。
暴力的な所を肯定するわけではないが、
粗暴な中にも思いやりと男気がある所が好感を持てる。
【宇津井優一】
フリーターくん※7巻~に登場。
日雇いフリーターで借金しながらパチスロで散財する日々を送る。
世間に対する愚痴が強く、嫉妬と妬みで生きており、非常にネガティブ。
ピーターパンシンドロームを描いた現代社会における、底辺の塊のような人物。
ギャンブルを辞めよう、明日から頑張ろうと何度も思うが辞めきれず、借金がかさむ。
ホームレスを体験し、強盗されて更に文無しになった時、母親が倒れた。
そこで両親と和解。
借金している母親に変わり、自分が返すと丑島に啖呵を斬った。
そこで丑島に男気を認められ、借金の完済を目指して
以前より幸せな家庭環境を送る事になる。
丑島により家庭環境が修復された、極めて珍しいお話。
【佐古彰】
生活保護くん※24巻~に登場。
無職で無気力、生活保護で寝るだけの生活を送る29歳。
ネットで知り合った友人と関わって行くうちに、ウシジマくんから借金する事になる。
卑屈で偏見なものの見方をしていたが、父の死をきっかけに立ち直って行く。
その影響は友人にも表れ始め、徐々に社会との信頼を構築していく。
闇金を完済した後、偶然ウシジマくんと出会って声を掛けられ、背中を押される。
ドン底から這い上がった人物で、将来的にも希望が持てる終わり方でした。
ダメな人間の本音を代弁してくれるので、読んでいて心が痛かったです。
彼のように悪癖を見直せられれば、少しカッコいいと思います。
【天生翔】
フリーエージェントくん※30巻~に登場。
秒速1億稼ぐ男として一時期話題になった、与沢翼がモデル。
別の人がモデルとは言わせない。
情報商材を販売しており、内容はかなりリアル。
被害者と成功者の側面を細かく描写しており、後日譚も
与沢翼そっくりの顛末を迎える。
情報商材で稼ごうとするアフィリエイターや、
簡単にお金を稼ごうと商材やツールを買う人に対する
リアルな注意喚起となる。
◆まとめ
闇金業者として、債務者としての情景をリアルを描いており
闇金の世界はこういうものだと想像できそうな世界観です。
しかし、現実には闇金はここまで大胆な行動はしません。
作中でも語られている通り、警察や特に弁護士には弱いです。
闇金に返済義務はありませんが、かといって最初から
借りパクするつもりだと、痛い目も見ます。
ストーリーにドンドンのめり込んでしまい、
胸が苦しくなってしまった事もありましたが
以下の点を学び取る事が出来ました。
・現実の闇金は直接的な暴力は振るわない
・人生崩壊レベルの嫌がらせや詐欺を行うのは同じ
・弁護士に弱い
・人生楽観の恐ろしさ
・借金根性の醜さ
・努力をしない金儲けの危うさ
読むと憂鬱になってしまう事もありますが
道が拓ける事もあるかと思います。
借金をやめたい人、解決したい人は面白い漫画だと思います。